寒い夜のこと/エピソード1
最近この辺りをウロツクようになった。
人間達は不親切だが悪い人間はいないようだ。
時々くれる小魚の干したんなどで飢えをしのいでいた。
ある日訪れた一軒の民家。何かくれるかもしれないので
裏口にきちっと座り様子をみた。
カーテンが開いて僕を見つけた人間の女が
「おはよう」と言った。
こんな反応は初めてで戸惑ったが悪い気はしなかったし
この辺りにいることにした。
1週間ほどつかず離れずで観察した。
そして急に寒い日になり夜になった。
空腹と疲れで不安だった。越せるかどうか怖かった。
うずくまってたら家の人間が外で何かしてた。
なぜか呼んでみようと思った。「すいません」
するとその男は意外にも「おいで」と。
僕は小走りで近づいた。
頭をなでてくれて「お前も大変やな」って。
そして「ついてきな」と言って歩き出した。
お店の入り口でしばらく中の人間達を見てから
扉を開けてくれた。「はいるか?」
僕はためらわず 入った。
他の人間達はきょとんとして僕を見た。
朝挨拶したことのある人間の女が
「お前来たんか」と言ってわらった。
そしてその男は他の人間達に言った。
「こいつの面倒みるわ」
暖かかった。そして初めて安心した。