畳の上で死んでやる
僕のテリトリー内の左官屋の兄ちゃんが
僕のおっさんを訪ねてきた
目をつむったまま聞き耳を立てていた
「内の縁の下で猫が死んどってな〜」
「なぬ??」
「なんか上等な感じの猫で飼い主が探してたら
あかんからどこのか知らんかと思てな」
「上等そう?」
「この前もタバコ屋のとこでひかれて死んどる猫がいて
抱き上げたったらまだ温かくてな またひかれたらあかんで
スコップもって走ったばかりや」
おっさんは皆にわからんとこでそういう優しいことする
人間が大好きだから神妙に話を聞いていた
「僕はしらんな〜 毛の長い上等そうな猫やろ
けど猫て敷地内で死なんやろわからんように遠くで
死ぬらしいでな どっかからきょったんかな?」
「そやろ 一応お隣の奥さんにも聞いたんやがな
猫仲間みたいな感じで知らんかなと思てよ
この辺で猫飼ってる家て○○さんとことよ
みたきのミツナリやわさ」
「なぬ〜 君はえ?君はえ?」
めっちゃ嬉しかった 仲間が死ぬ話は嫌やけど
左官屋の兄ちゃんは僕の名前で呼んでくれよった
そう!僕は超地域密着の地域全体で盛り上げてもらいたい
そんなお猫様なので めっちゃ嬉しかった
しかし猫はそやねん 迷惑かけたらあかんし
無様な姿見せられないから遠くいくねん
でも僕はあきません たぶん僕いなくなったら
おっさん、前みたいに夜通し歩いて探してくれて
あげく風邪ひいてみんなに迷惑かけるンや
そんなことさせられないね
だから僕は無様でも何でも
その時が来たら絶対畳の上で死んでやる
それで化け猫になってずっとお店にいたる
例えば僕はもういないのに夜中にニャー!って聞こえても
おっさん絶対よろこんでくれるしな
などと考えながらまどろんでたら
左官屋の兄ちゃんは帰ってった
おっさんが「お前は死んだらあかん」と
寝てる頭をぐちゃぐちゃにした