ミツナリの軌跡

僕には秘密の場所がある
この前それは秘密ではなくなった
東の空を仰ぎライオンキングのごとき志を確認してたら
後ろでひそひそ声がする
振り返るとおっさんと花番頭が僕を見て笑ってた
「どうやって行きよんね　落ちよらへんやろか」
以前お店の屋根から落下したことがあり
しかもクルリが出来ずお背なからいったのを
花番頭に見つかり大恥をかいたことがある
それ以降細心の注意をしてるからもう落ちることはない

郊外に住む同種には無理な話だが
密集地だと色んな色の屋根に国境はない
最高の考え場所になる

その日、色々考え反省し、明日の画策をまとめて
ひとまわりして帰ろうと思ったら
そこから見下ろす交差点におっさんがいた
多分ココロに行くんだ
「がんばれよ」と心で思っていたら
急におっさんが振り返った
「やべ」慌てて尾根を越え隠れたが
おけつは見られたかもしれない
いや別に悪いことをして怒られるからではない
おっさんはすぐに心配するから
「そんな遠いとこ行って　迷子になったらどないする！」

遠くはないよ　大丈夫
国境なき高台は走れば10秒でお家に帰れる

でも今日は雨　そこには行けないな

昨日より体調もましで大半をお外にいた
暖かかったし　風もなく
おっさんがさっきから何かを探している
「ブラシしらんか？　みつうの」
僕のブラッシング用のブラシを探してるみたいだ
そんなもん見つかる分けなかった　　隠したし
だいたいキメが細かすぎてすぐケでいっぱいになって
僕のケのかたまりで擦られるんはいやなのだ

しかたなく別のブラシを見つけてきたみたいだ
呼ぶけれど嫌だから無視

つかまって　ごろーんとされた

「おっ」　こりゃいける！

みればキメの荒い人間用のブラシだった
「もうこれ、みつうにおろしたらええわ」

「たまらん」
右をしてる最中に左がかゆくなり自らごろーんと
またその逆もごろーんと　なんどもなんども
至福の時だった

すると花番頭が帰って来て無様を写真におさめやがった

どうも体調が今ひとつだ
熱もあるなこれは
今日はお店はお休みなので
お花束カウンターでゆっくりしていた
そんな僕を見ておっさんは心配そうに抱き上げてくれて
長い時間そのまま眠った
そして久しぶりにお供え儀式もしてもらった
これは何かと言うと
「こんな可愛いもんは一日にいっぺんは神様に
お供えしなあかん！」とおっさんが編み出した遊びだ
平行に高く持ち上げてくれて
「はは〜」とおっさんが言うだけのシンプルな遊びだ
景色が変るし下らなすぎて楽しいから気に入ってる

でもそれでも僕があんまり喜ばないから
おっさんはまたとても心配そうにした

大丈夫！明日にはまた元気になるよ

朝からお店で「パンパーン！」と音がした
ぎくっとした
今日は花番頭のお誕生日　「おめでとう！」
いつも僕を大切にしてくれてありがとう
でも僕は君を同等かそれ以下にみててごめんね
安心するんやで　番頭がお店にいたら
掃除機でケ吸われた時はちょっと嫌いになったけどな
ほっとするからさ　ずっといてやそばに

最近店の人間達がよく「あんた友達は？」と言う
多分殆ど店なかか近くでまどろんでいるからだろう
そう、宿敵の黒の大小やお浜さん、茶の爺さん
目の蒼いキモイやつなど　最近ここらにおらへんねん
僕はこっち側に来てしもたから会議とかあんまり出れないし
情報がわからんけど　旅に出たかな
実はちょっと寂しいキモチだ　言わないけど

今度斑の子が僕のご飯を狙いにきたら
そっと聞いてみる　なんか知らんか
寂しいキモチは確かだけど　でも後悔なんかじゃない
こっち側に来てたくさんうれしいし
花番頭は見てておもろいし

ウッホホ〜イ
えがんでた顔が治ってきたよ
結構時間かかったけど　なんとかさ
この前病院で打ってくれた注射は効くね
痛いけどそら値段の分だけはある！
人間達よありがとう
結構お金を使わせてしまってるね
またその内なんかで返します