ミツナリの軌跡

5日間の職業体験が終わって
赤い服を着た女子達が帰っていった
男泣きしそうになった
しゃがれ声だから泣くのは我慢した
最初不覚にもお弁当を狙ってしまって
恥ずかしかったけど
いい子達だったから寂しい
お昼時は殆どそばにいたのに

また来てね　まってるよ僕は
また色々教えたるしね

おっさんや女将さん　花番頭も
なんだか寂しそうだね
そりゃそうだよね

体験の学生達がアレンジフラワーの練習してる
「どれどれ 出来映えは」と作業台から作業台へ
ジャンプっ　　　　　　はずれ！
かろうじて落ちなかったがお腹から着地
しかもさしかけたお花の上に
バラが折れた
そのお花の学生はビックリして目がまん丸になった

そんなに怒られなかったことで余計に反省
なんでこうなんや　僕は

花番頭にだっこされて反省を続けてたら
「みつうは怒りながら反省しとるな」と

こういう顔なんです　僕は　でも、ごめんね
やり直して良いのが出来たね

普段はあんまり浅ましいことはしない僕だが
魔がさしてしまった
職業体験の学生達がお昼を食べだして
その匂いについいってしまった
学生達は僕のことが好きだからけらけら笑ってる
もちろんお弁当にはありつけなかったが
すぐ側でおいしい匂いは堪能できた

「こいつ格下やったらとことんいきよんな」
後ろでおっさんの声がした
「あんた！怒らなあかん！」
後ろでおっさんのおばさんの声がした

晴れてる　めっちゃ気持ちいい
朝早くから開けてもらって点検をすませて帰って来た
今日はお店はお休みだからゆっくりできる

はずが

見知らぬ小さいのがいるではないか
変な赤い服を着ていて掃除とかしている

なんだ？

悪い人間ではなさそうだけどよ

通路でおっさんが話しているのを聞いてみた

「内のお店には立場でのランクがあって〜
一番は母親　次にミツナリ君」

おっ　僕２番目やん　いつから？

「だから君らは新人さんだからミツナリさんと呼ばないといけない」

素直に「はい」と答えている

場合によっては親切にしてやらんこともない